第6話 煌めく文化祭(前編)

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 その日の夜、久しぶりにナラムからゲームへの誘いのメッセージが来た。今の仕事が終わり次の仕事が始まるまでの小休止期間とのこと。  冬凪はゲームへの誘いのメッセージというだけなのに胸の鼓動が高鳴るのを感じた。  ワクワク感とかちょっとしたときめきとか、そういう思いはナラムと一緒に過ごしてて前からよく感じるものではあったが、胸の奥底から湧き上がるこの感じは何なのだろうかと戸惑う。  ナラムのことが異性として好きになってしまっているのだろうか。しかし、いまいち確信は持てずその思いを一度振り切った。  約束の時間通りにゲーム内へログインするとすでにナラムの表示はオンラインになっていた。早速チャット機能で話しかける。 【トーナ:なんかすごい久しぶりな気がする!】 【ナラム:ほんとだね。通話できる?】 【トーナ:はーい。準備するので少々お待ちを】  ヘッドフォンを取り出して耳に当て、通話機能をオンにする。 「お疲れ様ー!」 「久しぶりにログインするかも」  そう言うナラムの声は心なしかいつものトーンよりも明るかった。仕事が一段落ついて少し気持ちに余裕が出来たのだろうか。 「そうだ。トーナに教えたいことがあってさ」 「いきなりどうしたの?」 「久遠と眞津藻さん、今日2人で本当にパソコン買いに行ったんだよ」 「ええー! ほんとに!?」  冬凪は衝撃の事実をナラムから知らされることとなった。久遠はあの場の雰囲気で答えただけで、正直きっと実現しないのだろうなぁと思っていたのだが、まさかこんなに早く実現されるとは。 「でもあの2人が一緒にいるところバレたら世間的に結構まずいんじゃ……」 「眞津藻さん監修の下、結構本格的に変装したみたいだよ」 「どんな感じだったんだろう……。見てみたい」 「たしかに」  そう言うと通話越しで二人で笑い合った。  最近起きた身の回りの出来事などを話しながら、二人はいつものようにゲームを進めた。数日後にはまた忙しくなるようで、売れっ子芸能人は本当に大変なんだなぁと、しみじみと冬凪は思った。  と同時に、忙しいというワードで冬凪自身も数週間くらいはあまりゲームが出来なくなる可能性があるということを思い出した。 「そう言えば私も文化祭が控えてて、少しの間その準備とかで忙しくてあまりゲームが出来なくなるかも……」 「へー! 文化祭かー! 一般参加大丈夫な日とかないの?」 「あるけど……来るの!?」 「時間が合えば行ってみたいなと思ったんだけど」 「もしバレたら学校がパニックになっちゃうよ」  そうは言ってみるが、正直来てくれたらもちろん嬉しい。しかし堂々と二人で歩けるわけでもないので、そこは少し寂しい部分でもあるが。
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