第6話 煌めく文化祭(前編)

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 次の日から早速文化祭の準備期間ということで、なんとなく学校中が慌ただしいような、落ち着かないような雰囲気を感じ始めた。  冬凪は学校に着くと教室に行く前にパソコン部の部室を見に行くことにした。何か文化祭のお知らせがあるかもしれないので、一応気になってきたわけだが、思っていた通り張り紙が貼ってあった。 『本日放課後、文化祭の打ち合わせをするので部員は必ず集合するように』  毎年、たしかにこのようなお知らせ文章はあったが、いつもはただの事務的なものだった。しかし今回は違った。こんな命令口調で『必ず』なんて今まで使われていたことはない。  そのようなことを考えていると、あることに気が付いた。そう言えば元々の部長は卒業したので、今は当然他の誰かが部長をやっているはずだが、誰が部長をやっているのかを知らなかった。  この文章から察するに、新しい部長は厳しめな人なんだろうかと思いながら部室前を後にした。  いつも通り特に何も変わらない授業を終え、放課後のチャイムが鳴る。 「用事のない人は残ってください。お化け屋敷の打ち合わせをしますので」  真島秀介が全員へ呼びかけた。今日から毎日残らないといけないのかと思うととても憂鬱だが、今日は部活の方に行かないといけない。 「すいません……今日は部活の方で集まりがあって……」  一応申し訳なさそうに手を上げながら、冬凪が真島秀介に向けて言った。 「わかりました。それは行っても構いませんよ」  許可を得たのでカバンを持ち教室を出ようとするが、その教室を見渡すと冬凪以外は全員残っていることに気付いた。サボるような人は誰もいないんだなぁと、感心と同時に文化祭が終わるまでの苦労が頭に浮かんだ。  他の教室前の廊下を通るが、どこの教室からも話し声が聞こえてくる。どこもすっかりと文化祭準備モードである。  そんな教室の並びを少し急ぎ目に歩きながら抜けると、朝も来たパソコン部の部室の前に到着した。すると中から数人の話し声が聞こえる。  部長も分からず、なんなら部員の顔も名前も分からない。このまま帰ってしまいたいという気持ちを押さえ、冬凪は気合いを入れて入口ドアを開けた。
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