第6話 煌めく文化祭(前編)

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 ドアを開けると同時に部室にいた全員から一斉に視線を集めることになる。  登下校や廊下ですれ違ったことがあるのだろうか。なんとなく見たことあるような人もいる。もちろんまったく初めて見る人もいるが。  改めて部室内を見渡すと人数は6人、全員男子だった。 「あの……文化祭の打ち合わせの張り紙見たので来ました」  冬凪が注目を浴びながら恥ずかし気にそう言うと、6人のうちの1人がバインダーを取り出し何かを確認し始めた。 「3年生の貞目冬凪さんかな?」 「あ、はい、そうです」  返事をすると、1年生だと思われる2人組が「パソコン部に女子っていたんだ」「幽霊部員ってやつか」など、ヒソヒソと話している声が冬凪の耳にも聞こえて来た。 「たしか去年は文化祭と3年生を送る会の時の2回だけ来てましたよね。現在部長やってる2年の室瀬航大(むろせこうだい)です。よろしく」 「えっ……2年生?」 「はい。いま3年は貞目さん以外いませんよ」  まったく予想だにしない展開に驚きを隠せなかった。間違いなく去年まで3年生は、少なくても4,5人いたはずだ。 「他の3年生はどうしたの?」 「やる気がなかったので僕が辞めさせました」  室瀬航大ははっきりとした口調で言い放った。室瀬の背格好は冬凪と同じくらいで男子としては小柄だ。顔も童顔で中学生と言われても何も違和感がない。そんな彼が、その見た目に似合わないセリフを言ったのでただ驚くことしか出来なかった。 「ここをただの遊び場としか使ってなかったので。部である以上何か目標を掲げて、全員一丸となって活動するべきだと思いましてね」 「そうなんだ……そしたら、私も辞めた方がいいかな?」 「完全な幽霊部員はいてもいなくてもどちらでもいいので無視しました。辞めさせた先輩方に聞いても、あなたとはあまり面識がなくどんな人物かよくわからなかったので」  たしかに、特に交流を持たなかったせいで、今のパソコン部の状況すらも入ってこなかったわけだしなと冬凪は思った。 「ここに来たということは文化祭手伝ってくれるんですか?」 「あー、一応……。クラスの出し物がお化け屋敷だから、あまり頻繁に顔は出せないと思うけど」 「そうですか。でも現在女子が一人もいないので、当日のイベントの時にいてくれると助かります」  軽い気持ちで足を運んだが、思っていた以上に本格的に手伝わないといけない流れとなり、思わず小さく溜め息をついた。
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