第6話 煌めく文化祭(前編)

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 教室では恐らくまだ皆で打ち合わせをしていると思われるが、今日は正式な許可をとっているわけで、後ろめたさはあるもののそのまま家に帰ることにした。 (明日からきちんと残りますので許してください……!)  帰路を歩いていると、先程の部長のことが頭をよぎる。女に慣れているとかそういう感じではなく、むしろ女友達すらもいなさそうなイメージである。  それなのに自然にああいうことを言ってくるとは、一体どういう人なのかとても気になってくる。ただ、気にはなるがそれだけだ。  深く追求しようという気にはならないので、とりあえず部員として、部長が考えたイベントは成功させなくてはいけない、と冬凪は幽霊部員ながら決意を固めた。  家に着き、少しだけゲームをしようかなとパソコンの前に座ると、タイミング良く携帯電話からメッセージの受信音が鳴った。  誰からだろうと思いながら確認すると、相手は嘉島玲奈からだ。 『今日のクラス打ち合わせは終わったよ。明日から毎日、残れる人は学校で残れる最大時間の20時まで作業だって』  そのメッセージを見て、冬凪は大きくため息をついた。 『わざわざありがとう。明日から頑張る』  嘉島玲奈へ返信のメッセージを送り、携帯電話を布団の上に投げる。  パソコン前の椅子に力なく座り、そのままの状態で目を閉じた。 (まあ……予想はしていたけどね。一ヶ月くらいで終わるわけだし、頑張るか。あ、そうだ)  布団の上に投げた携帯電話を回収し、再度、メッセージアプリを操作し始めた。 『やっぱり明日から毎日、お化け屋敷準備で20時まで居残りになっちゃったから、ホントにゲームできないかも』  メッセージを送った相手はもちろんナラムだ。前回ちらりと言っていたわけだが、ほぼ確定的になったので一応のお知らせである。 『おっけー。大変だと思うけど頑張って!』  すぐに返事は来た。ナラムや久遠に比べれば毎日20時まで残るくらいたいした忙しさではないはずだ。 (やると決めたからには最後までやりきってやる!)  なんとか気持ちを切り替え、明日からに備えて今日はご飯と風呂を済ませたら早く寝ることにした。
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