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冬凪が決心をした翌日から、クラスメートほぼ全員が毎日のように20時まで残り作業をしていた。
最初はやる気のなかった冬凪だったが、一度気持ちを切り替えてからは率先して色々な作業を手伝ったりと、いつしかクラスメートの中でもやる気のある部類に見られることとなる。
「今回の文化祭、めちゃくちゃ気合入ってるけどどうしたの?」
そんなある日、嘉島玲奈が作業している冬凪へ話しかけた。
「特に何もないけど……ダイパレはここ数年忙しい毎日を過ごしてるのに、たかが1ヶ月程度の文化祭で弱音を吐いてるわけにはいかないなって思って」
「へー! 冬凪もすっかり変わったねぇ! 恋の力?」
冬凪をからかうようにニヤニヤとした表情を浮かべた。
「そんなんじゃないから! 自分と違う世界の人達に触れて、今までの人生全然頑張ってこなかったなって思ったの!」
「ふーん、まあねー。そうだよなー。そんなに年齢も変わらないのに凄いよね」
嘉島玲奈は真面目な表情へと変わり、一瞬ふと何かを考え込むような素振りを見せたが、すぐにいつもの明るい表情へ戻る。
「よし! 私も冬凪を見習って気合入れてやるかな!」
「うんうん! やろやろ!」
2人並んで話し合い、笑い合いながら小道具作りを開始した。
学校では限界の時間まで残り、家に帰ってご飯を食べ、お風呂に入るとほとんどすぐに寝る時間。
可能な人は休みの日もやってほしいということで、土日すらも学校へ足を運んでひたすら作業をしていた。
ナラムには近況報告のメッセージでもしようかと何度か思ったが、特にゲームもしていなかったので、あまり意味のない報告をするのも申し訳ないなという気持ちが勝り、一度もメッセージをすることはなかった。
そんな生活を繰り返し2週間程が経過していた。
疲れも溜まっているせいか、いつもよりも眠いなと思いながらも冬凪は授業を聞いていると、マナーモードにしている携帯電話にメッセージが受信されていることに気付いた。
こんな時間に誰からだろうかと思いながら、こっそりと画面を見ると、差出人は久遠であった。
(日中に久遠からなんて珍しい、何か緊急の事でもあったのかなぁ……)
小さく息を吐き、先生にバレないように恐る恐る画面を表示させる。
『なんか來夢が調子悪いみたいでさ。俺もいまは単独の仕事で少し遠くまで来てるから行ってやれないんだよ。なんでもいいから食料品届けてやってくれない?』
驚きで思わず声が出るところだったが何とか堪えた。冬凪の予想は的中してしまった。
(いきなりそんなこと言われても……ナラムの家だってわからないし……!)
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