第6話 煌めく文化祭(前編)

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 先生の位置からは見えない、机の影になるように携帯電話を持ち返信する。 『心配だけど、私が行っていいものなの!? マネージャーさんとか事務所のスタッフさんとかは?』  すぐに久遠から返事が来た。 『あいつスタッフとか関係者には心配かけたくないから黙っててくれって。体調崩す時いつもそうなんだよ』  ナラムらしいと言えばたしかにナラムらしい。きっとその状態でもライブの日であれば全力でやるのであろう。相変わらずその情熱に頭が上がらない。  そんなことを考えていると、連続で久遠からメッセージが送られてきた。そこには住所が記載されていた。 『あいつの家の住所ね。明日土曜日だから学校休みだよね? 少し遠くて悪いけど後は頼んだ。あ、学校早退まではしなくていいよ』  これがナラムの住所か、と気持ちが高鳴るを感じた。同時にダイパレの來夢の自宅住所が表示されていると思うと、急に周りに見られていないかという不安感が襲ってくる。  当然誰も見れる位置にいないのでわかるわけがないが、もしこれが誤って漏れたりしたらとんでもないことだ。ナラムもきっと引っ越しをする羽目になるのであろう。そう考えると少し恐ろしいなと思う。  その後、久遠にナラムの体調の状態はどれ程酷いのかを教えてもらおうと思いメッセージを送ったがそれ以上の返事はこなかった。  メッセージは見てはいるけど返事が面倒でしてないだけだろうなと冬凪は感じた。ということは緊急を要する程酷いわけではない気がする。  ただ、体調が悪くてホントに飲み食いが出来ていなかったり、冷蔵庫に何もなく辛い状態で過ごしているという可能性ももちろんあるわけで、結局は出来るだけ早く様子を見に行こうということで決心を固めるのだった。  授業が終わり、放課後、いつも通りほぼ全員が残りお化け屋敷の準備時間だ。皆もさすがに慣れてきて、残ることに対する苦も薄れている様子で各自作業に取り掛かる。  作業状況としては概ね順調ではあるが、残り日数を考えると余裕はない。  冬凪は迷いながらも、まったくやらずに帰るという選択肢は選べず、少しだけ残ってキリの良いところで用事があるからということで抜けようと考えた。  時計を気にしながら作業を進め、時間は18時半、丁度キリも良いので今日はここまでにしようと片付け始める。  すると冬凪からは離れたところで作業をしていた嘉島玲奈が静かに近付いてきた。
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