第7話 煌めく文化祭(後編)

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 ナラムには午前中はパソコン室、午後は少しだけおばけ屋敷やるから午後からなら学校案内できるよという内容のメッセージは送っておいた。 『仕事調整できそうだから多分午後からいけるはず』  という返信が来ていたので呼び込みをしながらもワクワク感はとまらなかった。 「ゲームに勝てたら賞品がありまーす! 挑戦される方はお気軽にどうぞー!」  引き受けた手前、与えられた仕事はきちんとやらないと気が済まない。コスプレという部長の作戦が成功したのか興味を持ってくれる人は多かった。 「えっ、あれ誰?」 「コスプレ可愛いな。おまえやってけば?」  通り過ぎる人のヒソヒソとしたやりとりは聞こえるがいまいち挑戦者は現れなかった。 (いくら有名なゲームって言ってもどちらかというと大人向けのじっくりと育成して遊ぶゲームだからなぁ) 「えーと、貞目さん……?」  そんなことを考えているといきなり名前を呼ばれてそちらの方向へと振り向いた。  するとそこには委員長の真島秀介が立っていた。 「あ、真島君、よくこの格好でわかったね」 「あ、いや、午前中はパソコン部のイベントに付きっきりって聞いてたからさ」  たしかに役割を決める時にそういう話しはしていた。 「わざわざ来てくれたんだ、ありがとう。挑戦していく?」 「あ、せっかくなんでやっていこうかな」  無事に初のお客さんの呼び込みに成功した。 「部長! 挑戦者です!」 「こちらへどうぞ」  部室に向かって冬凪が声をかけると特に表情を変えずに部長が席へと案内した。もっと愛想良くすればいいのにと思いながらも冬凪は飲み物の準備をした。 「はい、どうぞ。頑張ってね!」  一声かけると真島秀介は少し照れた様子で飲み物を受け取り口に運んだ。  と、二人の対戦を少し観戦しようかと思っていた冬凪だったが複数人部室に入ってくる気配がした。 「ただいまイベント行ってますー!」  すぐに入り口の方へ振り返り接客スマイルを向けた冬凪だが見た瞬間固まってしまった。  かなり変装はしているので恐らく他の生徒にバレることはないだろうが、明らかにナラム、久遠、眞津藻瑠々の3人がいた。 「えっ、え、みんな来たの!? 来るのって午後からじゃなかったの!?」 「やっぱりトーナじゃん。なかなかコスプレ似合ってるよ」  久遠がニヤニヤとした表情で話しかけてきた。 「時間の調整ついたしサプライズで午前中から皆で行こうって急に決まっちゃって」  眞津藻瑠々が少々申し訳なさ気に久遠に続けた。 「そのキャラ、トーナも好きだったよね。本物みたい。凄い可愛いよ」  さらにナラムがそれに続いた。
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