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「あ、いやー、あはは……恥ずかしいな……ふぅ、暑いね」
予期せぬ訪問者に冬凪は動揺を隠し切れなかった。全身は火照り服の胸元をパタパタとして体に空気を取り入れた。
「その格好でそんなことしたら胸元見えちゃうよ」
眞津藻瑠々がそれを見て冬凪に近付き囁いた。露出が少ない服とは言え自分が今フリフリのコスプレだったことがすっかりと頭から抜けていた。
さらに焦りで全身が熱くなるのを感じる。
「おっ、お二人さんなかなかやるね」
そんな冬凪の様子にはお構い無く、久遠がすでに対戦している二人のゲーム画面を観察していた。
「本当ですね。しかし企画したパソコン部部長の意地があるので勝たせてもらいます」
そう言うと部長の室瀬航大は一気に詰めより連続攻撃を決めた。
「反撃の隙は与えません……!」
「くっ、やばい」
必死に距離を取り反撃のタイミングを伺っているようだがまったくそのタイミングを与えず、敢え無く真島秀介は2連敗で終わってしまった。
「お疲れ様でした、正直思っていたよりとても強かったです、ありがとうございました」
「くー、ありがとうございました」
真島秀介はとても悔しそうな面持ちで席を立った。
「次俺いい?」
決着がつくとすぐに久遠が席へと座った。
「もちろんです。キャラは基本装備で基本技のみなので注意して下さい」
「オッケーオッケー問題なし」
久遠は正直ライブとかよりも心から楽しんでる気がするなとその表情から冬凪は思った。いつもよりも全然イキイキとしている。
さすがゲーム内ランキング1位だけある。この際アイドルを辞めてプロゲーマーにでもなった方が良いのではと感じてしまう。
「先に好きなキャラ決めていいよ、遠慮なく得意キャラで」
「そうですか、お言葉に甘えて遠慮なく」
室瀬航大はすぐにキャラを決める。
「まあ、そうだよね。でもそれじゃー俺には勝てないよ」
久遠もすぐにキャラを決めた。
「久遠勝てるかな?」
冬凪は小声でナラムへと問いかける。
「多分勝てると思うよ。一度俺が強いキャラ使って対戦したことあるけどボロ負けしたから」
ヒソヒソと冬凪とナラムがやりとりをしていると久遠が驚きの言葉を発した。
「俺が勝ったらこいつがコスプレして案内係りするから冬凪をしばらく貸してくれない?」
「えっ、ここで!?」
「元々そうするつもりだったじゃん、俺負けないから早く冬凪から衣装貸してもらいな」
「そうだけどコスプレして手伝いまで考えてなかったからさ…」
こいつと呼ばれながら指をさされた眞津藻瑠々が驚きの表情を浮かべながら久遠と話している。
「代わりの人材がいるならもちろん大丈夫です」
「よし、交渉成立っと。やるか」
冬凪がナラムへと囁いた。
「えっ、元々そうするつもりって……どういうこと?」
「いや、俺も何も聞いてないけど」
冬凪とナラムにとっては謎の約束がされたまま、二人の勝負が始まった。
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