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再会
ぴんこん!
敦から連絡が入った。
『お疲れっす!
今日7時~倉八にて 合コン開催
3×3 丸井建設受付嬢
明さん、俺、川辺
間に合います? 』
即答だと申し訳ないので、休憩時間終了ギリギリに返信した。
『わり。今日は取引先と顔合わせ称した親睦会。ハシゴ確実。他当たってくれ』
即OKのスタンプが返信された。
実は嘘を言った。
今日はそんな予定なんて、ない。
俺ももう、齢32。最近合コンがしんどくなってきた。
仕草と言葉がくねくね、ねとねとしてる女。
張り切る仲間。
何故か上から目線の女王様気取りの女。
盛り上げようとする仲間。
人のプライベートを遠慮なくガツガツ聞いてくる女。
イキる仲間。
ずっと下向いて飲み食いするだけの女。
空回る仲間。
大して旨くもない料理、酒を出され、ひたすらウザい人間観察を長時間しなきゃならない。
これって究極の時間と金の無駄遣いだ。
だったら、缶詰め食いながら動画見て、家飲みしてた方がずっと有意義なんだわ。
鼻につくかもしれんが、俺は建築士だ。
敦が言うには、結構高収入で響きもいいもんだから、女どもが飲み会にのって来やすいんだと。
俺は餌か!
まあ、あいつは開き直って堂々とその事を公言してるから、なんか憎めないんだが。
「お疲れしたー」
皆続々と帰っていく。
今日は滞りなく仕事が終わった。
いつ見ても、現場の職人さんたちは格好いい。
だが、気難しい人も多い。
俺の仕事は、いかにこの人たちに気に入ってもらえるかが重要だ。
無理なことをお願いしても、お前のためならってやってもらえるような関係を目指してる。
決して俺が現場を動かしてると思ってはいけない。
俺なんて、ただ紙の上で想像するだけで、実際に形には出来ない。
あんなに上手く左官だって出来ないし、ビスだってキレイに打ち込めないし、重機だって使いこなせない。
交通整備だってあんなにスムーズには出来ない。
俺はその支えの上に乗っかってるだけだ。
それで給料もらってる。
幸い、今回は現場の人たちにからかわれながらも、俺の思い通りに事が進んでる。
本当にありがたいことだ。
若気の至りで、俺が現場を仕切ってる的な態度してた、イタい時期もあったが、紆余曲折して、やっと少しこの仕事が分かって来たような気がする。
今、仕事が凄く楽しい。
だから、余計に合コンが面倒くさく感じられる。
来年はうちの会社も新卒採用するみたいだから俺もお役ご免となるかな。敦の合コンの餌。
ふと現場の休憩場所に目をやると、一人になってヘルメットをもたもたと外してる奴がいた。
なかなか帰れないので俺は近づいて声がけした。
「お疲れす! 」
ふっとこちらを見た奴は俺と同じ年の頃。
んっ?!
どっかで見たことあるぞ、こいつ……
「あれ? ……高橋、くん? 」
声を聞いて、記憶が繋がった。
「あれ? お前、安田か? 」
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