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テレビの向こうでは知らない洋画が放送されている。冴えない男が可愛らしい少女と喫茶店で雨宿りをしていた。
『洋画って字幕で観る? 吹き替えで観る?』
二人で映画を観た後、フードコートで食事をしているとき、エリカが訊ねてきた。
『洋画は観たことない。てか、観ない』
『なんで?』
『つまんないから』
『中身がつまってない映画なんてこの世にないよ』
『なんで? 内容が空っぽの作品って言葉あるじゃん』
『それは観た人の感性が空っぽだからそう思ってるだけだよ』
『なんかそれっぽいこと言うじゃん』
『でも、あの映画は内容空っぽだったけどね』
『じゃあ、お前も感性空っぽじゃんかよ』
『そうだよ。だから、これから私の感性は育ち、色づき、実をつけていくんだよ』
『なんだよそれ』と言った瞬間、思わず笑ってしまった。
『もしかしたら、こういう会話だって傍からみたらコメディかもしれないよ。どこかで誰かが聞いていて、笑ってるかもしれないよ』
『知らない誰かを笑わせるつもりで会話してねえよ』
『意外とそういうのがおもしろかったりするんだよ、きっと』
『本当かよ』
『そのうちわかるよ。きっと』エリカが笑った。
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