十九歳の夏

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 テレビから流れる音を聞きながらスマートフォンでニュースを見る。まず目に入ったのは、六年前の今日、起こった無差別殺人についてだった。 女に振られた腹いせに女子大に侵入し、学生三人と警備員一人を殺害した男は犯行当時、今の僕と同じ歳だった。  ビールを舐めるように飲む。酷く苦く感じた。頭が縛られているように痛む。僕はテレビを消した。スマートフォンを操作して動画サイトを開き、お気に入り登録している動画を再生した。  高校生のころに放送されていた若手芸人が多数出演している視聴者が投稿した実話を元にコントをするという番組のなかの作品の一つ、『面倒くさい男』。それは、かつて自分とエリカがしていた会話をモチーフにしてプロの芸人が脚色を加えて演じているものだった。 「よくもまあ、こんな昔のこと覚えてるよな」  ビールを一口飲み、今にもあふれ出しそうな感情を流し込む。 「なんでお前が言ったことを俺が言ったってことになってんだよ」  マヨネーズを大量にかけたツナを頬張った。しょっぱくて涙が出てきた。
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