紅に染めてし心。

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 冷泉が、旭の身を支える様に抱き寄せ、少々険しい表情を浮かべていた。 「外等出て、何をなさっておられるか。先程迄、高熱を出されて居ったのですぞ……!」  冷泉の姿がある。旭はまだ少し揺れる視界に冷泉の顔を映し、身を支えられながらも頭を下げた。 「冷泉殿。貴方が私を此処へ連れて来てくれたと聞いた。先ず非礼を詫びたい……申し訳ありませぬ、感謝致す」  先ず告げねばと。だが、冷泉の表情は依然険しいまま。 「そんなもの、どうでも良い。さぁ、御部屋へ」  早々に部屋へと促す冷泉だが、旭は足を進めず。心情と体調のせいもあるのか旭は、先程と同じく言葉を止められ無い。戸惑う冷泉の羽織を強く掴み。胸に渦巻く不安を抱えたままに。 「貴方は、何故そう迄私を気遣うのです……政略婚で、しかも貴方と比べ多く劣る私へ……理由を言葉でお聞かせ願いたい。体裁や義務も過ぎると、私は居たたまれぬのです……!」  懸命に答えを迫る旭の顔色は、再び悪いものに感じられた冷泉。冷泉には、そちらの方が大事であるのだ。  震える手で、己の羽織を掴む旭の手を静かに取る冷泉。 「顔色が悪い。床へお戻りを」  旭への答えでは無く、そう口にした冷泉は旭を抱き上げた。体格や力もあるのか、軽々と旭の身は冷泉の腕の中へおさまる。突然の事に、旭は驚きに目を見張り。 「れ、冷泉殿……っ?!お、下ろして下され……っ」  続き飛んでも無い状況に旭は顔を赤らめ、冷泉の羽織を乱す勢いで掴む。しかし、冷泉は旭を抱えたままに部屋へと向かう。抗う旭へ、冷泉が其の顔を見下ろす。此れが睨む様にも見えた旭は、其の眼光に青ざめてしまった。
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