東宮妃の秘密。

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 等と。こんなにも切なく美しい顔で、声で囁かれた旭は、瞼を閉じることすら出来ずに冷泉へ見入ったまま。声も出る筈は無く、唇は優しく塞がれてしまう。 「ふ……っ、ん……」  初めて口付けを交わした、あの時と同じ。熱くて、激しくて、奥から何かが込み上げる不思議な感覚。冷泉の舌が、拙く動く旭の舌を絡めて。耳へ届く淫靡な水音は、旭の身を更に未知なる感覚へ導く様だった。  僅かに乱れた旭の寝衣、冷泉の手が帯を緩めてしまう。 「っ、ま、待ってくれぇ……」  情けない声を上げ、瞳に涙を浮かべて鼻を啜った旭は、冷泉の衣を掴み震える。冷泉は優しく髪を撫で、其の額へ口付けを落としてやって。 「皇子……私が怖いですか……?」  優しくそう言う冷泉の顔を、旭は腕の中より見上げた。己を気遣い憂える瞳に、旭は胸を鳴らす。違う。冷泉を拒絶したい訳でもなければ、恐怖もない。こんな思いも感覚も初めてで、何が何だか分からなくて。旭は、冷泉の胸へ顔を埋めて首を横へ振る。 「違うぅ……嫌、とか、怖いじゃ……体が変、だから……恥ずかしいんだ……っ」  冷泉は、恥じらいに涙する旭の此の姿に抑えられぬ思いが込み上げた。何と愛らしく、可憐なのか。思わず旭を抱く腕に力が入ってしまう程。 「旭……っ」  声の後、塞がれた唇。先程以上に、深くて、熱くて。 「っ……ふぅっ……はぁ、ん……っ」  旭の身が、冷泉の僅かな理性に優しく床へと倒される。 「本当に、貴方は罪な御方だ……」 「ん……っ、あっ、ちょっ……そんな……っ」  冷泉の唇、舌、指。其れは、旭の全てを翻弄し、更なる熱を誘う。恥じらいと快楽に、浮かぶ涙。此れが己の体なのか。旭は、潤み虚ろな瞳で冷泉を映す。美しくて、けれど激しい熱を帯びる瞳と視線が絡んで。
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