蜜月とは。

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 遂に、真の蜜月となった旭と冷泉。まだ其の空気に気が付かぬ東宮御所。いや、只一人薺を除いてか。  基。勿論、斯様な事情は触れ回るものではない。とは言え、旭と冷泉に関しては常日頃皇家の者等を始め、遂には父なる帝迄が案じていた。恋は困難か、せめて友情だけでもと。故に、紆余曲折をどう緩やかに理解して貰おうかと。誤解が続けば面倒も有ろうと思う反面、気恥ずかしさ故につい避けてしまって。  やはり、薺を筆頭に恐ろしきは女の勘と。 「――そう言えば、最近東宮妃様とはどうなの?」  との言葉を発したのは、公務に訪れた瑠璃であった。旭は、此の突っ込みに筆を止めてしまう。そんな旭の様子へ瑠璃が気付けぬ訳も無く、瞳を光らせた。 「そう、やはり……何かあったわね」  瑠璃は、鋭く斬り込む。 「い、いやっ、其の……っ」  旭の顔は、逆上せんばかりに赤く茹で上がっている。此れで答えは出ていると、瑠璃は扇子で口を覆い吹き出した。が、笑う処では無かろうと不愉快な旭。 「な、何故此処で笑う……っ」  少し強く物申すと。 「素直過ぎるのだもの……そんな事では、わざわざ口にせずとも直ぐ話は回るわね」  瑠璃の笑み。其れは、旭の反応が面白いとの事もあるが、もう一つは素直に喜ぶ思いがあった。読本ばかりに夢中であった旭が、人並みに恋を知ったと安心出来て。そして、私心も勿論。 「本当に安心したわ。和泉の君様を、御守り出来たのね……良かった、良かったわ……有り難う、旭……」  目出度いと染々と語る瑠璃は、感極まり涙迄を浮かべていた。先程は不機嫌であった旭も、気恥ずかしさもありつつ其の反応へ苦笑い。瑠璃は、一先ず手拭いで涙を拭うと。 「で。どうなの?旭」
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