蜜月とは。

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 双方、不思議な雰囲気が漂うも。 「で、あのっ。此方の情報は、真なのですかっ?」  やはり、確認したい旭が勇気を出した。其の勢いに押される冷泉。 「え、ええ……血の型や誕生日等は、流石に変えて居りますが……他は、殆ど小紫へ依頼されて答えた通りです」  戸惑いながらも、読本の情報は冷泉の其れと同じくと。旭は、複雑な表情で肩を落としてしまった。 「そうなのか……」 「どうされましたか……妙な事でも?」  旭の様子が気に掛かり、冷泉が案じる。旭は、僅かに染まった顔を俯けて。 「其れなら、此れを手にした方々は、つまり……冷泉の事を詳しく知る事になるのだろう……其れが……何か、嫌だな、とか……」  冷泉には、衝撃が走る瞬間であった。何と、可愛らしくもいじらしい言葉を宣うてくれるのか。 「皇子……っ、貴方と言う御方は、本に……っ」  罪な、と。公務中である事を忘れそうになるが、震える拳を握り締め必死に耐える。しかし、旭はそんな冷泉へ不安げに首を傾げてと。  接戦ながら、何とか理性が勝利した冷泉。呼吸は少々上がった様だが。 「わ、僅かに、伏せられた情報もありまする……っ」 「えっ、何処っ?」  目を輝かせ、机上へ身を乗り出す旭の無邪気な姿も又容赦無い。冷泉は気を落ち着け、咳払いをひとつ。そして、『和泉の君』の紹介頁を指す。 「此方にある好物の項目、果実酒が好みとされて居りますが、私が一番の好物に答えたのは甘味です。果実酒は、其の次なのですよ」  旭は、感銘を受けて冷泉を見る。確かに、甘味か果実酒かとなると『和泉の君』には後者となろう。しかし、真の好物が甘味であるとは物凄い意外である。そして、冷泉が己と近付く感覚に胸が鳴って。
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