蜜月とは。

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「旭の立場は理解しております。ですが、決して御無理はなさいませぬ様」  旭は、冷泉の案じる思いへ笑顔を浮かべる。其れは、素直な喜びを見せていた。 「大丈夫だ。冷泉も頼るから」  そんな笑顔は、やはり冷泉の心を揺さぶる。取られた腕が、冷泉の方へと引かれた。其のまま、旭は冷泉の胸へ倒れ込む様に。当然ながら、旭の心の臓は飛び出そうな程に大きく跳ねて。 「えっ、あのっ……えっ……」  動揺の中で、声は言葉にならず。けれど、冷泉の腕へ素直におさまったまま。 「私は、必ず貴方を支え、御守り出来る様精進致します」  神妙な声が頭の上より聞こえた。 「れ、冷泉……」  徐に上げた旭の顔を、冷泉も見詰めて居た。小休止ながら公務中であると、頬を染めつつそんな躊躇いが旭の表情に。冷泉が察したのか、否か。唇が触れ合う直前。 「接吻だけですよ」  低く甘い声が聞こえた。優しく重ねられた唇から伝わる熱。其の、心地好い感覚を暫し味わって。  徐に離された唇。互いに見詰める瞳は、熱い思いを圧し殺す、切なさが滲むが。 「旭。貴方と、こうして確かなめおととなれました事を、帝へ御伝えしとう御座いまする」  冷泉の口より、突然の申し出。旭は、一瞬其れが頭へ届くに間を要した。 「えっ、えぇっ……父上へっ?わざわざ……?」  が、其れも直ぐに届き動揺。当然、顔は熱いまま。其れもそうだろう、既に婚礼も何もかも全て認められた状態だ。父へわざわざ斯様な報告等と。しかし、冷泉にとっては此れは当初より、政略婚の枠に止まらぬ程の思いがあった。旭を慈しみ、見守って来た佳宵へは、其れを告げて感謝を伝えたいと。
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