蜜月とは。

9/19
前へ
/187ページ
次へ
「確かに……我等は政略婚にて既に、双国より認められためおとです。ですが、其れ以上に私は旭を思い、守り、支えたいとの覚悟を帝へ御伝えしとう御座いまする……亡き后妃様へも、同じく」  冷泉の瞳からは、誠実な強い思いが伝わる。政略結婚でありながら、恋人、基。夫が、両親へ改めて誓いを立ててくれる等と。夢に見た物語の如くである。幸福感に思わず、旭の瞳が潤み出す。 「あ、有り難う……改めて父上へ話すのは、少々気恥ずかしいが……そうだな。私も、父上へ冷泉への思いを知って貰いたい。勿論、母上へも」  冷泉へ素直な思いを告げた旭。其の唇へは、又も暖かな口付けが落とされたのだった。  冷泉の思いを受けて、旭は早速父へと拝謁を願い出る書簡を認めた。改めて夫夫揃っての拝謁となるもので、旭は嬉しさもあれどやはり気恥ずかしい。だが、己等の意志が強くある事を父なる帝へ報告するというのは、旭自身が、今の不安を和らげる事が出来るやも知れぬ期待も。後宮に漂う雰囲気へも、其れが変化をもたらしたらばと。  一方の佳宵だが。突然に、斯様な書簡が届いた事実。先ず、一体何があったのかと不安が大きく過った。息子夫夫の一大事か。ならば、何としても公務の隙を突き、場を設けてやらねばと早々に返事を認めたのだ。其れは、不安から動揺と焦りがあったのか、文字が少々笑っていたと云う。  とは言え。叶った帝への拝謁の日は、流石に今日、明日とは困難。加え、旭も職務は多い身なのだから。故に、其れ迄早くとも七日は要するとの事であった。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加