蜜月とは。

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 そんな美しい景色を、寂しげにぼんやり眺めてしまっていた旭だが。 「皇子……?」  影から遠目に覗く旭の気配へ、冷泉が気付いた様であった。旭は、我に返ると盾として居た灯籠より、身を離して姿を見せる。 「えっと……話をしてる様で、出て行く時を見計らってたんだが……お邪魔致す」  苦笑いを浮かべ、歩み寄って来た旭へ一度深く頭を下げると、傘へおさめようと嚆矢が動く。そして、共に入った日傘の中、微笑みと共に頭を深く下げる冷泉。 「来て下さり、嬉しゅう御座いまする。皇子」 「あ、いや……うん……」  複雑そうに笑みを浮かべる旭へ、冷泉が表情を失くす一瞬があったが。 「嚆矢殿。お付き合い、有り難う御座いました。此れよりは、私が皇子へ傘を……どうか、お戻り下され」  嚆矢の手より、冷泉は丁寧に傘を取り上げた。僅かに触れ合った手と手。 「あっ……はいっ。皇子様、東宮妃様。御気を付けて、御戻り下さいませ」  直ぐに我に返ると、其の場へと跪く嚆矢。だが、旭の表情はまだ浮かない。冷泉は、促す様にその肩へ触れる。ひとつの傘に並ぶ背を、嚆矢は憂えげな溜め息で見送ったのだった。  部屋へと戻って来た旭と冷泉。一先ず、上へ腰を下ろした旭であったが。 「――何か御座いましたか」  直後に冷泉の問う声。先程より、冷泉は旭の様子に違和感があったのだ。案じる其の瞳へ、旭は己の情けなさに嫌気がさす。何故こうも、女々しいのか。 「いや、御免。下らない事だよ」  と、自嘲気味に声を返した旭。だが、冷泉の瞳が鋭く変わる。 「私にはそうではありませぬ。お話下され」  強く斬って捨てる、そんな切り返しと凄みある表情へ、旭は条件反射で身を正した。上にて。 「は、はいっ。そっ、そうですな……!」
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