蜜月とは。

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 佳宵は、素直に驚いた。思いも寄らぬものであったから、無理もなかろう。一体、此処数ヶ月で何があったと云うのかと。佳宵がそんな表情のまま、冷泉の隣へ並ぶ旭へ視線を向けると、旭は染まった顔を僅かに俯けて。 「あの……父上、色々と御心配を御掛けしましたが……私も、冷泉殿と思い同じく。此れより先、真の伴侶として在りたいと……其の……側室も、娶るつもりはありませぬ」 「旭……」  呟いた佳宵の驚きは、更に増す。何と、やって来た『和泉の君』に絶望していた旭が、こんなにも満ち足りた表情でと。事情絡む政略婚故に、嫌悪にさえならなければ其れで良しと思っていたが。  まだ驚きが勝るも、佳宵が頷き微笑む。 「左様か。旭よ、では幸せな巡り合いと相成ったのだな」  其の問いへ、旭が父へ顔を向けた。 「はい」  見間違い無く、旭の幸せそうな表情であると確信出来た佳宵。些か寂しさも同時に湧くが、内向的な息子の新たな一歩はやはり喜びが勝る。確りと頷き、己の思い示して。 「真に目出度い。冷泉殿、我が子をそなたへ任せる……我が后も、安堵と喜びを覚えて居る事であろう」  佳宵の言葉へ、冷泉は改まり厳かな拝を。 「近く、后妃様へも改めて御報告致したく思うて居りまする。帝、有難う御座いまする」  佳宵は、冷泉の誠実へも笑顔で頷いてやった。そして。 「真に善き日である。冷泉殿、楽になされ……ならば、旭も西の帝の元へ向かわねばな」  と。其のままの笑顔で提案。旭は、此れに又も顔を赤く染め上げる。 「はっ、はい……も、勿論……っ」 「ふむ。では、次の月には向かうと良い。そう帝へ、伝えておこう」
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