やって来た東宮妃。

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 再び身を倒された旭は、又も狼狽え抗いを見せた。 「いやいやいやっ!まっ、待たれ……っ」 「皇子。宵に声を荒げるはしたのう御座います。事の最中ならば、構いませぬが……」  言いながら其の唇が首元へ来たもので、躱す様に身を捩った。 「そっ、そう言う事ではありませぬっ。わ、私は、初めてだと申したでしょうっ!」  顔を赤らめ、涙を滲ませる旭。 「はい。ですから、優しくと」  己の思いは通じない様だと、旭は冷泉の腕よりすり抜けた。盾のつもりか、何なのか、枕を抱き締め御帳の隅にて縮こまる。此処から、何と言って切り抜けるか。 「其の、ま、まだ恐ろしいのですっ……も、もう少し、お待ち頂きたい……っ」  涙目で震える旭を、冷泉は無言、無表情にて見詰める。又怒らせたのだろうか、そんな不安に旭は緊張に喉を鳴らしたのだが。  徐に、其の場にて手を付け頭を下げた冷泉。 「承知致しました。では、お休みなさいませ」  そう言い、早々に布団の中にて横たわってくれた。一先ず今宵は切り抜けた様だと、旭は漸く安堵の一息。まだ少し警戒しつつも、背を向ける冷泉の隣へと旭も潜る。  画して始まった新婚生活。其れは正に、国の都合による政略婚其のものだと。旭にとっては広い布団の隅で、東宮妃様を気遣いつつ啜り泣いた初夜となった。
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