雅やかなる聖地にて。

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「其の一声で、お前が元気でやっているとよう分かったわっ。斯様な話は、後にしろっ」  小声克つ、早口でそう返してやった旭。隣で話をしていた冷泉と水月が、何気に其方へ向けた顔へ、兄妹揃って固い笑みを浮かべる姿があったのだが。  其の後。旭と冷泉は、西の御所にて国賓を招く部屋へと通された。広く、厳かな雰囲気漂う其の部屋には、此の日の為に生けられた季節の花が。水月より、百合が手掛けてくれたと聞かされ、旭と冷泉も表情を和ませる一瞬もあり。  共に腰を落ち着け、向かい合う兄妹、兄弟。水月が、笑みを浮かべ。 「――父も程無く参りましょう。今暫く御待ち頂きたい」  旭が答える様に頭を下げる。 「上皇は、御元気で在られまするか?」  水月は、思い出し笑いで緩んだ口元を笏で覆う。 「元気が過ぎて、御身が追い付かずと申しますか。先月、百合へ舞を披露するに力を入れ過ぎましてな。腰を、と相成り……」  話しつつ其の時の光景を思い出したのか、水月は肩を震わせて。しかし、旭にしてみたら西の上皇の大事。が、隣の冷泉は父への理解故か軽く頭を抱える仕草。 「そ、其れは、御身の方は……」  案じ訊ねる旭へ、一先ず笑いをおさめた水月。 「ええ。今はもうすっかり……失態も、今や滑稽話の種でしてな」 「父上も相変わらずですな」  溜め息混じりの冷泉の言葉。水月も頷きつつ、苦笑い。 「女子(おなご)の前で、直ぐ見栄を張るのだからなぁ……あれはもう癖だ」  水月の言葉へ、冷泉も表情を和らげる。そして、百合へと顔を向け会釈。 「其れが、こうも愛らしい嫁の為ともなると……余計でしょうな」
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