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水月へ笑顔を向けた旭。水月も微笑んで。
「勿論。其の予定ですよ」
此れに、冷泉へと満面の笑みを浮かべる旭。
「待ってるからさ。百合の接待を御願いするよ」
旭の笑顔と信頼に冷泉は落ち着き、静かに旭へ頭を下げた。そして、百合の手を取り庭へと。百合は最早、先程の名場面と己の状況に半ば夢の中へと片足が浸かっている様で。手を引かれるも、少々覚束無い足取りも又。そんな妹へ、旭は浮かべる笑みをひきつらせたが。
居残った面々も、又気を取り直して。此の場に思い切った旭は、蛍雪へ『あづき』に関する話を斬り込んだ。以前冷泉へ語り聞かされた時と、ほぼ同じくの反応であった。公務の際は、其々集まった支持者へ頭を悩ませた事も。日々あった多くの挿話へ、旭の好奇心も止まらない。
中でも、旭が熱くなる事柄とは。
「――いや、しかし……旭殿は、蛍推しではありませなんだか」
途切れた話の中で、ふと出た水月の突っ込み。
「えっ……?」
旭は、目を丸くさせて水月と蛍雪へ交互に顔を向ける。何故斯様な突っ込みが来たか、全く心当たり無くと。しかし、蛍雪が此の反応に緩む口元を笏で覆いつつ。
「そうですな……私より、冷泉の御紹介となって居りますし」
「えっ、そう、でしたか……っ?」
「ええ。私と冷泉の交流から始まり、共に競う事があったか、幼い頃の我等……と言うより、私から見た冷泉を知りたい御様子で」
此れに旭は、顔を真っ赤に染める。無意識に冷泉を話に出していた事もそうだが、わざわざ接待へ馳せ参じてくれた蛍雪への申し訳無さも手伝った。
「し、失礼致しました……っ」
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