尻の下。

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 泣き寝入った婚礼の日より、一夜が明けた。うっすらと瞼を開いた旭は、ぼんやり目の前の景色を見詰める。昨夜転んだままの方向を向いて眠ってしまったのだろう、丸く縮めた体も其のまま。まだ頭は起きてはいない。悲観にくれて、泣き寝入ったもので疲労が残っている。本日は、御披露目が開かれる日だ。まだ余裕もある、公務も婚儀前に急ぐものは片したのでもう少し眠るかと。そういえば、冷泉は。恐る恐る、隣へ顔を向けると冷泉の気配は無かった。此処で慌てて飛び起きた旭。まさか、寝過ごしたのかと。ならば、急ぎ身支度をと御帳を出た。  処が。 「な、何だ……薄暗いではないか……」  円窓から、まだ日が射す程ではなく。では、厠へ向かったのだろうか。そう思い至ると、己ももよおしてきた。どのみち頭を起こしては二度寝は出来まい。今度こそ、寝過ごす可能性があると寝室を出た旭。薄暗くも夜明けは近い、廊下へ足を進め厠を目指して。  此処で、ふと。後宮の庭より、気配を感じたのだ。何であろうかと、庭へと足を向ける。辿り着いた庭の一角に居たのは、何と冷泉。木刀を手に、素振りをしておったもので旭は驚いた。日はまだ射す程では無いが、其の姿は遠目にも確認できる。真っ直ぐに前を見据え、力強く美しい素振りだ。暫し、見入ってしまった程。  そんな旭へ気が付いたのだろう、冷泉は素振りを止め顔を向けた。瞳が合い固まる旭だが、冷泉は深く頭を下げる。 「皇子。御早う御座います」  慌てて、旭も同じ程深く頭を下げて。 「おっ、御早う御座いまする。其の……気配が気になり、此処へ……気を削ぎ、失礼致しましたっ」
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