恋わたるかも。

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 頼もしき婿の声は、佳宵の心へと確り届いたのであった。  佳宵の此の宣言より直ぐに、側近等も旭の即位へと動き出す。御所内は勿論、東宮御所の方も来る大事へ皆身も心も慌ただしくと。そんな東宮御所内で密やかな争い、と言おうか。后妃となる冷泉の付きとして、何者が召し上げられるか、其の選出が火種。冷泉が規律等への進言をした後より、確かに女官等の動きに慎ましさが見られる様にはなった。だが、此れは此れである。以前にも増して、何とか冷泉の目に掛かろうと。淑やかに振る舞いつつも、冷泉にとっては暑苦しい程に何かが伝わるもので。しかし、特に女官等の在り方へ物申す事は無かった冷泉。が、常其の動きは静観していたと言うから、恐ろしい。彼女等も、『和泉の君』を支持するには些か知識が薄い様だ。現在では、皐月只一人を指命するに止める事となったと云う。  更に。後宮の女官等に限らず、護衛として置かれる武人の間でも密やかな騒ぎも。此れは、現帝なる佳宵と次期帝となる旭の意見が大きく左右するのだ。取って付けたかの如く、旭の顔色を伺う者もちらほらと。  して。本日は、其の運びについて佳宵と二人きりにて初の会議である。 「――護衛は、お前の為にも確かな者が相応しい。白刃は、私の中で確実なのだが……お前はどうだ?」  神妙に切り出した佳宵へ、旭は頷く様に頭を下げた。 「は。白刃に関しては、此の私も彼への信頼は変わらず。御願い致します」 「承知した。では、治安維持部隊より、白刃と、もう一人だが……かなり絞る結果でな……」  言いながら佳宵は、手元の書簡を広げる。現在の治安維持部隊にて、最も優秀とされる者を密かに調査させたものだ。此れは、現在国防を管轄する皇家筆頭格へ、密に依頼したものである。
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