恋わたるかも。

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「お前も理解して居る事と思う。此方に関しては、お前の命を守る為の重要な案件だ。お前と、親しき者ばかりと言う訳にもいかぬでな」 「勿論です。何より、白刃が居てくれるならば心強く、初に顔を合わせる者であっても、此れより信頼関係を築ければと」  佳宵は、旭の成長に父の顔を覗かせ、笑顔で頷く。  御所にて帝の護衛となると、やはり厳格な審査を要する。其れは、個々の実力は勿論、性質、精神も。そして、やはり時に柔軟に判断し動ける者が適当。更に、年齢も重点となる。佳宵が最初に告げた通り、かなり絞られた結果なのだ。 「お前も、其れなりに顔を合わせる事があったろうが……嚆矢が適当ではと思うて居る」  出た名に、旭の表情が一瞬強張ってしまうが。 「あ……嚆矢、をですか……」  書面へ視線を向ける佳宵は、旭の様子に気が付けず続ける。 「ああ。体力的な年齢、実力、経験は勿論だが、嚆矢の人柄も良い。白刃とも、配属部隊は違えど同期らしく……案外、早くに足並みも揃うやも知れぬでな」  佳宵が、旭へ嚆矢に関する報告書を差し出した。平静装い受け取った旭は、其の書面へと視線を落とす。先ず嚆矢の似絵。次に、出生等個人の情報は勿論、経歴や実力等々。帝直轄の治安維持部隊へ配属と言うだけで、其れはもう才が無くてはくい込めぬ域。其の中より、帝なる佳宵を納得させているのだ。況してや、愛息の護衛にである。故、旭が此の書類と佳宵の意向に物申す事が出来ようか。よもや、冷泉との接触が心配であるから他をと、そんな惚気の様な話等。
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