尻の下。

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 そう改めて考えると、冷泉の精神の在り方と現在の己との差に羞恥も湧く。旭は、己を恥じ入る思いと冷泉へ敬意を込めて深く頭を下げた。 「つい不躾な事を、申し訳ありませぬ。御立派な意思を御持ちだ……見習いたく思います」  此の姿に、一瞬冷泉は驚いた様に目を見張った。が、僅かに口元を和らげて。 「いいえ。めおととなったのです……此れより、互いを晒してゆかねばなりませぬ故」  静かに聞こえた声に、顔を上げた旭。其の瞳に映る冷泉は、昨日と同じ顔。何処にも笑みは見えぬ、凛々しい無表情であった。  そして次は冷泉が徐に頭を下げて。 「では、私は朝の湯浴みへ向かいます。又後程」  旭は、暫し立ち去る冷泉の背を眺めていた。が、厠を思い出し、続き御披露目も控えていると。漸く日が昇ったか、明るくなりだした庭を、己も冷泉を追う様に駆け出したのだった。  支度が整い、旭は昨日と同じく黒の紋付き裃姿、そして此れより東の装いとなる冷泉も。光放つ程に、真白い紋付きの裃に袴姿。模様に用いられた白銀の糸が、更に其の白を眩しく際立たせる様であった。そして、昨日は冠に覆われていた美しい長い髪を晒し、旭と同じく馬の尾のごとく結われて。  現れた姿に、皆一同又見惚れる。勿論、民の反応も同じくだ。しかし、其れは直ぐに大きな祝福の歓声と相成ったという。己の前では、口の端僅かも緩めぬ冷泉だが、民の歓声へは何とも美麗な笑みを向けて手を振って居るではないか。旭は二度見する程驚くも、女性の歓声が目立つ様に複雑な心境であった。
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