尻の下。

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 其の後は、皇家の者が集う宴にての御披露目。上に現帝、佳宵が。其の左手直ぐ下へ控えるは宴の主役となる旭と、右手に冷泉である。  本日は、昨日よりも更に多く東皇家の者が宴の席へと着いていた。皆、改めて冷泉の美貌へ驚き、口々に何かを囁き合う。特に姫等の視線は熱い。実は、其れと言うのも。 「――旭。冷泉様って、和泉の君様に似ておいでじゃなくてっ」 「お話ししたのでしょう?雰囲気とか、どうなの」  佳宵より移動を許され、真っ先に旭へ寄って来た従姉妹等による小声の問い詰め。現在祝いの盃へ酒をと、東皇家の筆頭格等に囲まれている冷泉を横目に頬を染め、目を輝かせ。そうなのだ。『あづき姫の恋日記』は、従姉妹等のほぼ全員が愛読しているもので。  顔を寄せ合う面々、其の中で旭も声を潜める。 「そう、だな……気性はまだ詳しく分からぬが、粗方似ておいでだと……」  昨夜感じた圧を思い出し、素直な感想を。すると、従姉妹等は込み上げる思いを抑え込むに複雑な表情。震え出す肩も又。実の処、此処東では和泉の君の支持が高く、従姉妹等は揃いも揃って和泉の君を推すのだ。つまり、此の場で旭は独りぼっちと。 「どうしましょうっ、お酒を注ぎに行きたいのだけど、和泉の君のお側なんて手が震えるわ……っ」  一人が火照る顔を覆い、思いを吐き出す。 「や、和泉の君ではなく、冷泉殿……」  冷静な突っ込みを入れる旭だが。 「私も……此の距離に和泉の君がいらっしゃるだけで……」 「いや、だから……」  和泉の君では無いと。しかし、冷静さを欠いた従姉妹等に、旭の声等届かない。 「お声も想像通りなんだもの……西の装束で在られた御姿を、もっと目に焼き付けたかった……」
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