尻の下。

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 龍笛を仕舞い、足を進める冷泉へ。 「あ、いえっ……此処でも構いませぬので……私も、直ぐ……えっと、公務へ……」  そう言う旭からは、冷泉との心の距離が感じられる。と、言うのも瑠璃に責任があった。あんな話をされた直後では、腹を立てている相手であれ妙に意識してしまうではないかと。故に、旭は冷泉の顔を見れず俯き加減。  しかし、冷泉は旭のそんな心情は知り得ぬ。此の態度に、片眉を僅かに動かした。 「部屋へ戻りましょう。斯様な大切なお話を立ち話で済ます等、品に欠けまする」  そう静かに告げた冷泉は、部屋へ向けて再び足を進め出した。 「えっ、え……いや、あのっ」  戸惑う旭へ、足を止めた冷泉が軽く振り返る。其れは、鋭くも強い視線だ。旭は、やはり妙な圧を感じて硬直してしまう。 「少しは、新婚の后へ気遣い頂きたい。話位は、部屋で腰を下ろし行うべきでは?私は、友好の為に西より此方へ参ったのですよ」 「はっ、はい……っ」  決して怒鳴られた訳では無いのに、何故か涙目の旭であった。  一先ず。部屋にて腰を下ろした途端、旭は伝えるべき事を告げた。早々に此の息苦しい処から去らねばと。処が。 「そうだ。帝より御伺いしたのですが……此の新婚の一月(ひとつき)程は、私との交流も重要と御公務の調整がされているとか」 「えっ……」  何故其れを御存知かと、旭の表情は愛想笑いのまま凍り付いた。 「せっかくです。私が、御持て成し致しましょう」  静かにそう言葉にするが、顔に笑みは無いではないかと、旭は心の中で突っ込みつつ。が、何も言えず冷泉の部屋で持て成しを受ける事となってしまった。
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