やって来た東宮妃。

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「――との事で、お前に后が来るぞ」  此処、東の御所にて。そう締めくくり、喉の渇きを潤すに茶を一口へ運ぶのは、初老ながら青年の如く朗らかな雰囲気漂う男。上にて腰をおろす此の御方こそ、現在東の国を統べる帝、佳宵(カショウ)である。其の直ぐ下へ控え、開いた口を閉じられず固まっているのは彼の第一子で次世代の帝となる皇子、旭(アサヒ)。人が良さげな其の瞳は、少し内気な雰囲気も伺える。事実、人が良くのんびりした気性なのだ。此の世では、性別違わず第一子なる者が親の地位を継ぐ。しかしながら、旭の人の良さへ親しみ感じる反面先を案じる家臣もいたりと。  父が茶托へと湯呑みを置いた音へ、旭は我に返った。 「お、お待ち下さい、父上。今のお話に確認したい事が……彼方の帝へ、妹の百合(ユリ)が向かうのはともかく……な、何故此の私に男子(おのこ)の后が宛がわれるのでしょう……」  我が子の物言いへ、佳宵は表情を引き締める。其の口より出た答えとは。 「此度の年は、我等東西が婚姻により結ばれ多くの年を越えた記念すべき年なのだ。節目に相応しい試みであろう」  旭の望むものではなかった。だけではなく、些か思いの行き違いも感じる程のものだ。 「い、いえ、其処では……」  座す身を前のめりにさせた旭へ、佳宵は上より腰を上げ明るい笑顔で息子の肩を抱く。宥める様に二、三度軽く叩きつつ。 「安心せい。此れも事情が絡むでな、お前には側室を持つ自由がある。彼方も承知だ……何より、男子の后妃を東(うち)が娶る事に意味がある。恋が出来ぬなら、友となれば良いだろう」
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