『和泉の君』様、攻略の道。

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 が。響いた冷泉の咳払いに旭も我に返る。 「御見事に御座いまする。只、此処迄美化されますと……少々照れますな」  言いながら、其の表情からは先程の微笑みは消えていた。けれど、雰囲気を見る限り満更では無い様子に、旭は小さく吹き出してしまう。気が付いた冷泉が、眉を潜め絵から旭へと顔を向けて。 「皇子……如何になさいましたか?」  鋭く光る瞳に、忘れていた緊張を取り戻した旭。 「えっ、あ、いえっ……美化はしておりませぬ。私の絵で冷泉殿を描くと、そうなりますので……っ」  冷泉は、旭の引きつった笑みを暫し無言で見詰めていたが。再び咳払いを。 「そうですか……では、此方は私が頂いても宜しいのですね」 「あ、えっ……」  旭が戸惑う様に、冷泉の眉が僅かに動いた。 「いけないのですか」 「いや、しかし……未完ですが」  旭には、此処が不満と。時が許さず、黒鉛の筆のみで仕上げた所謂下書きの様なものだ。端くれとは言え、絵を描く者として其れを贈り物とするのはどうかと。しかし。 「構いませぬ。私は、此れが欲しいのです……宜しいでしょうか」  先程の柔らかで優しい瞳は幻か。やはり、此の強い瞳には圧を感じると喉を鳴らす旭。 「は、はいっ。そんなもので、宜しければっ」 「有り難き幸せに御座います」  旭の了承に、冷泉は拝し改めて礼を述べたのだった。形的にはとても敬われている気はするのだが、やはり強気に出られぬ旭。  此の度は、冷泉が後宮の出入り口迄見送りに出てくれた。
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