後宮の花。

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「そ、そうでしたか。其れは、御気を煩わせた……皐月へ話しておきます」  旭が伝える迄も無く、今正に皐月は動いている事だろうが。此処で、冷泉も眉を寄せた。 「皐月殿が呼ばれた方々でも無かったのですか……?」  旭は、表情が複雑になる。東の東宮御所の風紀、其の程度が西の元皇子へ知れたのだ。何とも部が悪い。 「そう、ですね。後、冷泉殿が命じたのでも無ければ……まぁ、お若い方々が多かったので、恐らく冷泉殿へ御近づきになりたかったのやも。しかし、私ですとあんなに侍女の方は寄らぬもので……う、羨ましいですなぁ……」  等と。顔はひきつりながらも繕い、愛想笑いの旭であるが、内心は複雑であった。やっかみ、面目無さ。勿論、其れもあろう。だが、又違う腹立たしさも。  しかし。何故か、冷泉も其の瞳が凍る様に冷たくなった。そして。 「では……次より個々の職務を把握、確認し、不要と思われる役は退いて頂く様に私も声を上げましょう」  何とも鋭い瞳で、そう提案した冷泉。息を飲む旭は、心成しか己が御叱りを受けている様なとも。だが。 「え、いやっ。其処は、私が……」  何も冷泉自らが、自身の心象を悪くする必要はと。其れに、己が命じる分には特に何が変わる訳もない。元々女子の指示等無いのでと。しかし。 「いいえ。東宮妃なる私が、皇子以上に臣下を連れる等と言語道断。分を弁えねば、恥ともなります」  譲らぬ冷泉。 「い、いえっ、あの、別に其処迄……っ」  何だか分からぬが、冷泉の琴線に触れてしまった様子。狼狽える旭へ冷泉が、一呼吸の後で厳格で強い眼差しを向けてきた。此れに、旭は条件反射で身を正す。  聞こえたのは。 「皇子。私にも、東宮妃として他への示しが必要です。特に後宮内に於いての事は、私の思いを御聞き入れ下さいまするか……御願い申し上げまする」  東宮妃の進言。旭の答えは、一択に迫られる。 「はっ、はいっ……お、お任せ致します……!」
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