後宮の花。

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「こんなに一気に……短期間に……父上迄もべた誉めなのだぞ……」  分かりやすく拗ねている旭へ、鑑は軽く笑い手元の扇子を広げて風を楽しむ。が、ふと表情を改めて。 「しかしなぁ……東宮妃様は損をして居らぬか」  等と。旭は此れに鼻を鳴らす。 「損だと?何処がだっ」  父である帝迄、其の才覚に舌を巻いて居るのだ。何をしても平均を越えない己へは、あんな表情を見せて誉めた事は無いと。  鑑は、其処ではないと旭の方へ顔を寄せる。 「いや、こう言うのもなんだが……今回の改めで、東宮妃様の後宮での縛りは更に強くならぬか……男を好むにしても、今回で付く隙を自ら失くしてしまわれたぞ。全く以て解せぬ」  少し潜めた声で語られたのは、鑑の素直な意見。せっかく寄って来る花を、自ら遠ざけるが如くと。 「そう言われると、そうだが……物凄く生真面目な方なのではないか?此の話を彼が持ち掛けた時も、酷く立腹でな」  旭は、そんな紹介をしながら心は澄んでいた。僻みはあれど、冷泉が自ら此の様な意思を示している事へは安堵というか。  しかし、鑑の方は難しく考え込む様な表情。 「ほう……俺は、女子の支持等幾らあっても良いが」  どうしても解せぬと。そんな鑑へ、旭は呆れた様に笑う。 「皆が皆、お前と同じではないぞ」 「案外堅物やも知れぬな……解せぬものは解せぬ」  そんな鑑へ、旭は思い出した様に瞳を輝かせた。更には、前のめりに来たもので鑑も驚き上身を後方へ。 「そうだ。和泉の君も、無闇に女子へ手を出す御方ではないのだぞ。不器用ながら、優しさをあづき姫へ見せる繊細な一面があってだな……」  と。何故か嬉々として語り出した旭へ、鑑が何かに気が付き眉間へ皺を寄せた。
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