後宮の花。

21/22
前へ
/187ページ
次へ
 冷泉には、自然な事であったのだろうか。旭は、少し照れながら。 「いいえ。あの、私は不甲斐なくも気付けませぬで……一体、何時から気付いて居られたのですか?」  そう。あの時、情けないが己は薺の気配へ気付けず。冷泉は、其の事かと声の前に静かに頭を下げた。 「実は……幾度か皇子が後宮へお出でになられる時等、強い視線と気配が御座いました。殺気は無かったので様子を見ていたのですが、日に日に距離が縮まり……何やら観察をするかの如くに感じたので、流石に物申した次第です」  冷泉の話に、白羽も後宮付近で警戒を見せていた事を思い出した旭。ひょっとして、其方も薺やも知れぬと。現在其の行動意味を知る旭は、複雑な表情。 「そ、そうでしたか……」 「結局、彼女は何故あの様な事を?」  来た。当然、報告義務があろう。例のやり取りを思い出し、又妙に冷泉を意識してしまう。真を冷泉へ語るのはやはりと、旭は悩み。 「あぁ、えぇと……彼女は、まだ未熟でしてね。職務への熱もあり、用命あらばと常に意気込んでいたらしく……」  徐々に熱くなる顔を俯けつつ、歯切れ悪くも話し出した旭。へ、冷泉が眉を寄せる。 「我等の側近くへは、通常待機を命じられる者が居ると知るのでは……経験浅き者は、主に雑用が多くあるかと」  正論が空かさずに。勿論、其方も確認した処、薺は己等を見守る為に何時も皐月の合格基準を満たしこなしたのだと。此れも皇子と東宮妃への思いひとつであると、熱く語って居た姿が浮かぶ。 「あ。勿論、其れを済ませた上での事らしく……そもそも、其処は皐月が許しませぬでな。とにかく、過ぎた動きとはなった様だが、意欲に期待してと……」
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加