真の推しとは。

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 そんな佳宵の思いは、息子夫夫へどう影響するのか。しかし、父の知らぬ処で少なくとも旭の心情は変わりつつあった。とは言え、旭はまだまだ冷泉への振る舞いが見極めきれずに居たのだから。 「――皇子。此方の書類は仕上がりました。後、此方も手隙の際に御確認頂きとう御座います」  旭の執務室にて、机を挟み前へ座する冷泉が旭へ書類を手渡す。 「は、早いですな……」  此の有能ぶり。僅かに出たやっかみか、念入りに書類を確認してしまう旭。が、突っ込み処等無く。 「皇子が掛からねばなりませぬ議題の程度や量に比べれば、私へ許される職務は僅かに御座いますので」  真顔の謙遜。いや、冷泉には本心なのだろうが、複雑だと。 「いや、現時点で此の速やかで的確なお仕事なら……」  現在はまだ研修ともなる期間だが、東宮妃なる冷泉は何れ管理職が与えられる筈。そうなれば、仕事量も今より増えるだろう。が、難なく越えそうだと。旭の仕事量は、帝の次となるので現在でも確かに多く、其の内容も重い。更に佳宵は、そう遠くない内に旭への譲位を考えている事もあるのだから。  古では現帝の崩御を以て次の帝が即位となっていたが、ある時代より国へ縛られてきた帝へも休息をとの風潮へ。ある程度の年齢となられたらば、例外あれど其れが許される様になった為だ。  しかし、親の心とは子へ正しく伝わらぬもの。旭の中では、父が己より有能な冷泉に期待し、後宮より出したのやもと不安に近い嫉妬も。確かに、現在より指導や学習を得られたらば、先で頼もしい補佐官ではあるのだが。 「あの、どうですか?職務へ携わってみて……」
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