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私は物心付いたときには、城の仄暗い塔のなかにある小部屋に幽閉されていた。
その理由は、私がこの城の奥方……つまりは母、の不義の子だったという理由からだったことによるが、そんなことを知ったのはもう大分後になってのことであって。
私は生まれてから、永い永い時間、理由も知らぬまま、ひとりぼっちであった。
ただただ、メイドから与えられる服を着、食事をし、湯浴みをし。時たま、部屋に置かれた本などに目を通す。
そんな漫然とした時間が、幼き頃の全てであり。
そして、仄かなカンテラの明かり、冷ややかな石造りの壁と床の感触、それに高い天窓から差し込む陽のひかりと、月明かり。
……それが私の世界の全てだった。
「マルガリーテ様のお友達を、今日は連れてきたのです」
ある日、私の部屋を訪れた宰相のダンテが言った。
見れば、彼は私と同じ年頃かと思われる見知らぬ娘を従えている。
艶ややかな肩までの栗毛に、すべすべとした白い肌、薔薇色の頬、青く大きな瞳、長い睫毛。私の背よりちょっと高い、ほっそりとしたからだには、金糸が織り込まれた薄緑色の優雅なエンパイアドレス。
「名前は?」
私は一目で彼女の虜になった。さっそく私は彼女に尋ねる。
しかし彼女は長い睫毛を伏せて床に視線を放るばかりで、何も答えようとしない。
「恥ずかしいのかしら」
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