コンスタンチェという友がいて

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 ある夏の終わりの夜。  そのとき、私とコンスタンチェはいつものようにビスチェ姿で同じ寝台のなかで、眠りに就いていた。夜半過ぎ、何処か遠くで激しく剣がかち合う物音が聞こえてきて、私は目を覚ました。  私はコンスタンチェを起こさないように気を遣いながら、月明かりだけが差す暗闇にて、そっと扉に近づき、外の様子を窺った。すると、扉が唐突に開いた。 「きゃ!」  思わず、部屋の中に転げた私の口を塞いだのは、宰相のダンテだった。彼は何事かと驚く私に、声を上げ続ける暇も与えず、部屋の隅に私を引きずっていく。 「ご無事でしたか、マルガリーテ様……! しっ! お静かに! 賊が入りこんでおります!」  その語尾に重なるように数人の武装した男どもが、暗闇のなか、鈍くひかる剣を片手に部屋に飛び込んできた。彼らは叫んだ。 「あとはマルガリーテ姫のみだ! どこにいやがる?」  すると、男のひとりが、コンスタンチェがまだ寝ている寝台を指さした。 「あの寝台に眠っているのがそうだろう……! ひと思いにやっちまえ!」  そう言うや否や、男たちは暗闇の中、寝台に駆け寄ると、布団の上から、眠っているコンスタンチェのからだに何本もの剣を突き刺した。それは執拗に、ぶすり、ぶすり、と、何回も。何回も。 「コンスタンチェ……!」  私は恐怖のなか、震える声で彼女の名を叫んだ。が、その叫びはダンテのいかつい手に塞がれ、宙に霧散して遂に彼女に届くことはなかった。
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