殴る

11/12
前へ
/181ページ
次へ
樹里を最後まで殺してしまわないと、この怒りはきっと消えない。 「これはイジメじゃない。生半可なところでは終わらない。わかる?」 「うぅ……ごめん……なさい」 今更謝っても遅い。 それに、謝罪はあたしではなく伊代に言うべきだ。 あたしは知らない間に口元に笑みを浮かべていた。 そして壊れた人形のように樹里を殴り続ける。 その音だけが静かな廃墟に無限に響き割っていく。 「ふふっ……あはははははっ!」 気がつけば外はオレンジ色に染まっていて、夕方を告げるチャイムが聞こえてきていた。 手を止めて樹里を見下ろす。 その顔は真っ赤に染まり、鼻は陥没し、目はつぶれていた。 いつの間に死んだのだろう。 そんなことにも気がつかなかった。 あたしはよろりと立ち上がり、部屋を見回した。 重行、一樹、樹里の死体が転がっている。 「あははははははっ!」 自分の手は真っ赤に染まり、体力の消耗によって体はフラフラだ。 それでも笑いが止まらなかった。 ついに復讐に成功したのだ。 伊代を追い詰めたやつら全員を殺してやった!
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加