殴る

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あたしは拳を握り締めて思いっきり樹里の腹部を殴りつけた。 「ぐっ!」 樹里はくぐもった悲鳴を上げて顔をしかめる。 しかし、痛みに耐えるために体を曲げることすらできない。 「前田さんから聞いたよ。あんた、結構いいヤツだったんだってね」 あたしは樹里の頬をまたペチペチと叩いて言った。 「イジメをとめる正義のヒーロー。それが今はイジメのリーダーで、伊代を自殺にまで追い込んだ!」 あたしはまた力を込めて腹部に拳をめり込ませる。 樹里の内臓が体内で上下に分かれる感触がした。 実際に内臓破裂でも起こしたかもしれない。 樹里は殴られた瞬間血を吐いた。 それでも樹里への憎しみは消えなかった。 これほどまで相手を憎いと感じたことは、生まれて初めての経験かもしれない。 「イジメなんてさ、すごく些細なことではじまるよね? 伊代のときもそうだった。だけどね、今回は違う。あたしは伊代の復讐を背負ってここにいる」 あたしは言いながら樹里を殴る。 殴る殴る殴る殴る。 樹里の鼻から血が流れ出す。 口が切れる。 それでも憎しみは増すばかり。
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