転校生

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あたしは慌てて駆け出し、その人物が立っていた場所まで移動した。 フェンス越しに下を除いてみると、かすかに人の形が見えた。 それは地面に叩きつけられ、手足があらぬ方向へ捻じ曲がり、そして動かなかった。 あたしは短く息を吸い込んで数歩後ずさりをした。 飛び降りた……。 そう理解したとき、足元でクシャッと音がして視線を下げた。 暗い中でも目立つ、白い紙がそこに置かれていた。 足をどかせてみると《遺書》と書かれている。 あたしはそっとそれを手に取ったのだった。 ☆☆☆ 転校初日はさすがに緊張して、あたしは廊下で大きく深呼吸を繰り返していた。 先に2年B組の教室に入って転校生の存在をみんなに伝えている田中先生の声が聞こえてくる。 転校が決まってから田中先生とは2度職員室で会っていたが、若くてスタイルがよく、なかなかカッコイイ先生だった。 女子生徒の人気も高いようで、学校説明を受けている間に何人もの生徒たちに声をかけられていた。 やがて田中先生からの説明が終わったようで、ドアが開いた。 「染谷、入って」
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