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でも、全員分を覚えきることはできていなかった。
あたしにとってもっとも重要人物、4人を除いては。
「野口重行(ノグチ シゲユキ)です」
背が低く、少しふっくらとした顔立ちの生徒が席を立ち、あたしへ向けてそう言った。
あたしはマジマジとその人物の顔を見つめる。
写真で見て覚えているから間違いない。
あの人だ。
ただ、写真で見るよりも少し幼く感じられた。
「羽角蕾(ハスミ ツボミ)です。よろしくね」
ペコリと小さく頭を下げる。
ショートカットが揺れて両頬にかかっている。
「久保方一樹(クボカタ カズキ)」
ぶっきらぼうな挨拶。
こちらを向こうともしていない。
「来栖樹里(クルス ジュリ)です」
ハッキリとした態度と声。
ピンッと伸ばされた背筋は自信をあらわしているかのようだった。
あたしはその名前にピクリと体を震わせた。
しかし、それは他人が見ても気がつかない程度のものだ。
野口重行。
羽角蕾。
久保方一樹。
来栖樹里。
他の名前はもう、頭に入ってこなかったのだった。
☆☆☆
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