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そして一口飲み、その甘さに顔をしかめる。
コーヒーどくとくの香りが立ち込める中、あたしはB組へと戻った。
目だけで教室内を確認してみると蕾は相変わらず鏡で自分の姿を確認している。
重行は一樹の肩を叩いていて、樹里はそんな一樹と楽しそうに会話を弾ませている。
昨日一番にあたしに話しかけてきたのに、もう見向きもしなくなっている。
そんなものだと感じながら、あたしは樹里の横を通り過ぎようとした。
その瞬間。
足に何かがひっかかっていた。
咄嗟に体のバランスを取ろうとして、持っていた缶コーヒーを手放す。
あたしは転倒せずにすんだけれど、コーヒーは樹里の机の上に落下した。
それは茶色い液体をぶちまけて、樹里が読んでいた雑誌をぬらす。
「キャアア!」
大げさな樹里の悲鳴が教室に響き渡り、鏡を見ていた蕾が顔を上げる。
昨日教室へ入ってきたのと同じように、全員からの視線を感じた。
「なにすんだよ!」
樹里の怒号が聞こえてきてあたしはすぐに頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!」
「ちょっと、大丈夫ぅ?」
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