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暫くすると、家の玄関辺りから妹達の黄色い歓声が上がった。あの騒ぎ方からして、きっと桜木が家にやって来たのだろう。
俺には三つ子の妹達がいて、そいつらまとめて桜木の大ファンだ。──いや、違う。もう一人居た。おふくろも桜木大好き人間だった。
『もう~!何でうちの息子がユウちゃんじゃないの~。ユウちゃん、お願いだからうちの娘のどれかと結婚してお婿さんになってえ~。何だったら3人まとめてでもいいわよ~』
なんて、甘えた声でよく言っている。
3人まとめてなんて、そんな恐ろしい事を言うのは止めろと言いたいが、まあ、おふくろの場合は家事の手伝いを率先してやってくれる便利な奴だから桜木が好きなだけだ。
それより困ったのが妹達だ。おふくろがそんな余計な事を言うもんだから、桜木が家に来る度に、妹達による桜木争奪戦が始まるのだ。その様相はまるでゴジラとガメラとキングギドラによる三つ巴の仁義無き戦いだ。そんな壮絶な女同士の争いを見てきたせいで、俺は女嫌いになったと言っても過言ではない。
階下では何を喋っているのか分からないが、きゃっきゃ、うふふと楽しそうな妹たちの声が聞こえてくる。今日は大層盛り上がっている様子だ。
学校でもそうだが、桜木は相手を楽しませたり、元気付けたりするのが詐欺のように上手い。そんな所も俺とは対称的だ。逆に俺は人を怒らせたり、びびらせたり、凹ませたりする事なら天才的な才能を発揮できる。
だが、桜木は全く違う。奴がもしも芸能関係に進んだら、きっとファンの扱いは即プロ級だと思うし、はたまたホストにでもなったら、あっという間に人気No.1ホストになりそうな気がする。でも、無理して女に金を使わせるような事は好まない奴だから、そういう職業には先ず就かないだろうけど……。
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