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妹たちの声が一層うるさくなった。今度は黄色い声ではなく、罵声が飛び交っているから、そろそろ桜木がここに来る頃だ。
桜木はリビングで少し妹達やおふくろと会話をした後、俺の所にやってくる。
その時、妹達から俺に対する罵詈雑言が飛び交うのだ。
『あんな根暗人間、放っておきなさいよ!奴と付き合ってたらいつかきっと犯罪者の仲間入りさせられちゃうよ!』
『そうよ!あいつはきっと変態サイコパスよ!部屋で絶対爆弾でも作ってるはずだから、関わるとろくなことないわよ!!』
『あんな竈みたいな妖怪、絶対に構っちゃだめ!』
なんて事を入れ替わり立ち替わり喋っているに違いない。俺に対する妹達の認識は精々、そんなもんだ。
桜木は一度玄関を出て、塀から物置に飛び移り、そこから1階の屋根を通って俺の部屋にやって来る。
家の中からは、俺が梯子を収納してしまうので、入って来れないのだ。
暫くするとコンコンと窓を叩く音がする。桜木だ。
放課後の出来事があったせいで、俺はまだ顔を合わせたくなくったが、屋根の上の男を放置するわけにもいかず、赤く腫れた目を擦り、立ち上がった。だが、泣き腫らした目が気になって、足元をよく視ていなかったせいか、壁に立て掛けてあったアコースティックギターに躓いてしまった。
ギターは低音を響かせながら床に転がった。
「ああ、糞!こんなところに置いてあったのかよ」
このギターは俺のではない。桜木のギターだ。桜木は俺が刺繍している間、その後ろでギターを弾いているのが日課だ。
コンコン、とまた窓が鳴った。
「はいはい、今、開ける」
俺は慌てて両開きの窓を開けた。
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