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摩矢episode4 ~卑怯者~
「この食虫花野郎。新しい獲物はどうした?もう食ってきたか?」
突然の俺の言葉に桜木は柳眉な眉を歪めた。
「相変わらず酷いなあ、その言い方。食べるわけないでしょ、初日だよ」
桜木は体を曲げて室内に侵入してきた。
俺より頭一つは背が高く、そして、顔のパーツはどれをとっても美しく惚れ惚れするバランスだ。
「その言い方だとやっぱり付き合うのか?」
こんな男と付き合える女が本当に羨ましい。
「うん。まあ、不安要素もあるけどね」
桜木は肩を竦めてみせた。
「不安要素?」
「だってさあ、俺って今まで長続きしたことないだろ?」
「そりゃそうだ」
即座に言うと桜木は指を指し、──それそれ!!と言った。
「何で秋ちゃんはそんな当たり前のように言うの?!俺の何がいけなかった?」
──全くだ。あの糞女共め!
これだけハイレベルの男と付き合うんだ。だったら初めからそれだけの覚悟と度胸を持て!みんな努力と根性が足りなすぎる!
……とは言っても、桜木と付き合う事に耐えきれず別れを切り出す女達の気持ちも俺は分からないでもない。
「お前が鈍感だからだろ?」
俺が吐き捨てると、桜木はぎゃふんとなって、力なく床に座り込んだ。
──いけね……、はっきり言い過ぎたか?
「あのさー、俺が鈍感って……どこがどんな風に鈍感なの?
俺はいつも出来る限り努力してきたよ。気になる事や嫌な事があったら話してくれっていつも言ってきたし……なのにみんな何も言ってくれず、傷付いた顔をして別れを切り出すんだ。一体、何なんだよ。
ねえ、秋ちゃん。分かってるなら教えてよ。俺はもう、あんな思いをするのは嫌だよ……」
半顔を掌で隠した状態で、苦し気にこちらをチラリと覗いてくる。その表情がまた俺の心臓をざわめかせた。
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