摩矢episode5 ~癒し~

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摩矢episode5 ~癒し~

 桜木は戸棚からトリートメントオイルと精油を取り出してきた。 「今日はどの香りがいい?リラックスなら断然ラベンダーだけど、ネロリやゼラニウムもブレンドする?気持ちをスッキリさせたいならペパーミントやユーカリってのもいいと思うけど」  脇で桜木が精油のビンを出して準備している。桜木はアロマサロンを開いている母親の影響でマッサージが得意だ。お陰で俺はいつもこいつの手で癒されている。  俺は瞼にラベンダーの冷湿布を貼ったままネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外した。 「今日はラベンダーで頼む。あとマジョラムも追加して」 「了解!──秋ちゃんって本当にマジョラム好きだね。毎回、ブレンドしてる」 「まあな」  いつもマジョラムを追加するのは念のためだ。マジョラムには性的興奮を鎮める作用があるらしい。好きな奴にマッサージをされるんだ。途中で変な気を起こして、妙な部分が勃ち上がっても困る。 「オイルはセントジョンズワートにマカダミアナッツブレンドでいくよ」  俺は無言で右手を上げ、OKのサインを出した。すると、精油のいい香りが桜木の方からしてきた。  ──じゃあ、失礼します、と言って桜木の掌が肩に触れる。ゆっくりと肩から首の辺りまで満遍なくオイルが浸透していき、精油の香りが部屋一杯に充満していくと、俺は大きく息を吸った。
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