摩矢episode2 ~痛手~

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『俺の返答次第であの女も俺と同じ痛みを味わうのか……』  そう思ったら、奴等の仲を裂くことが出来なくなった。  あの女は折角女として産まれてきているのだ。それだけで俺なんかより桜木に愛される資格がある。それが自然というやつだ。けれども、いつもこう思わずにはいられない。  ──俺も女に産まれていれば良かった。  そしたら、桜木に好きだという気持ちを伝えてもおかしくないだろうし、ひょっとしたら俺にも付き合えるチャンスがあったかもしれない。  そんな世迷い言に一瞬捕らわれたが、俺は大きく頭を振った。  よくよく考えてみたらそれでも俺にはきっと無理だと思い至ったのだ。  何せ、俺はめちゃくちゃ可愛げがないし、口は悪いし、周りからはサイコパス呼ばわりされているし、家族からも陰気で目が冷たすぎてヤバイと煙たがられてるし……。  そんな女の何処がいい?  誰が聞いてもそんな女……、終わってるだろ?  根本的に俺という人間性では無理なんだ。  それでも──。  何故だが桜木だけは俺の事を見捨てず、いつも側に居て微笑んでくれた。 『あははは、確かに秋ちゃんって言葉がきついけど、俺は秋ちゃんのこと大好きだよ。だって、一緒に居て、すごく楽しいし』  そう言ってあいつが穏やかな瞳を向けてくれると、俺はいつもホッとした。  俺はあいつの……、柔らかく、優しい瞳の輝きが好きだ。  透き通ったキメの細かい肌や、さらさらとシルクのように靡く柔らかそうな髪も好きだ。  俺を包む温かくて大きな手が好きだ。  俺の名を優しく呼んでくれる声も好きだ。  どこもかしこも俺はやっぱり桜木が好きだ!!好きで好きで堪らない!!!    もういっそのこと刺し殺して、剥製にしてこの部屋でずっと眺めていたい!  ……それなのに、あいつはまた他の女のモノになってしまった。  目尻から溢れるものを感じると、俺は慌てて起き上がり、机の上のノートパソコンを開いた。
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