うらぎりもの 前編

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「 ねえ聖職者様! ひどい裏切りだとは思いませんか!? 信じてたのに!姉のこと,信じてたのに...!!」 感情が高ぶったのか, 涙を流しながら,少女はほとんど,『お願い』というより,『懇願』という方がふさわしいような感じで,アンジュたちへと頭を下げた。テーブルに頭を擦り付け,目を固く閉じ,言った。 「... お願いします,聖職者様! 姉を...私の姉を,殺してください!!」 「 ...それで,いいんですか?あなたは...」 「 ええ,構いません!!」 「 ...ムスカリ...」 助けを求めるかのように, アンジュ がムスカリの方を見上げる。 「 ...あなたの姉を殺すと, あなたを庇う人はいなくなります。それでも,いいんですか?」 ムスカリが,諭すように,ゆっくりと尋ねる。だが,少女は頑なだった。 「...いいです!構いません!だから,だから...!」 「なら,いいでしょう。その姉の特徴など,聞かせてください」 「あ,写真があります!どうぞ...」 ふと,アンジュが気配を感じ,振り返ったが,何も見えなかった。 「...風,かな...?」 「どうしたんだ,アンジュ」 「いえ,何でもないです」 そうしてその後,計画は着々と進み,少女はひどく安心した様子で帰っていった。 「... 良かったんですか?ムスカリ」 「...いいんじゃ,ないか。あの子にとって一番ベストなのは,この選択しか無かったのかもしれないしな...」 「...そう,なんでしょうか...」 夕陽で赤く染まった,少女の後ろ姿を見送りながら,アンジュはムスカリに袖を引かれるまで,ぼんやりと考え込んでいた。 ~後編に続く~
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