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1 籠の中の鳥
私は中野ツバメ17歳。拡張型心筋症という病気が1歳の時に発覚し、ここ新四葉会記念総合医療センターに入退院を繰り返している。
現在は心臓の機能が低下し、補助心臓の手術を受けて心臓移植の待機者リスト入りしている。
親がそこそこ金持ちのせいでいつも個室に入れられる。そのせいで、頻繁に入院しているのに仲の良い友人は一人だけだ。
「ツバメ、何見てるの?」
突然声をかけて来たのはこの小児病棟の唯一の入院仲間である伊藤さくらだ。茶色っぽい髪色で、肩ぐらいの長さ。目がパッチリしていてかわいいと思う。
「動画だよ。山ガールの」
「山ガール?何それ」
訝しげな表情をする。
「登山によく、行ったりする女の人の動画だよ。私はこんな身体だし、気軽に登山とかキャンプに行ける人に憧れる!」
生き生きとした表情で語ると、
「そうだね。私も登山とかキャンプとか行ってみたいな。ツバメちゃんや翼くんと行けたら楽しいだろうな」
そんな話をしていると、部屋に慌ただしく入って来る足音が、聞こえた。
「ツバメ! 見舞いに来たぞ。これ、やるわ」
紙パックのバナナオーレを手渡し、椅子に座る。
翼は身長175センチで切れ長の二重でいとこの私から見てもイケメンだ。絶対学校でもてていると思う。密かにさくらちゃんも翼に恋心を抱いていることも知っている。
「ありがとう、翼」
「あっ! さくらちゃんごめん、ジュースは1つしか無かった」
「いいの。気にしないでね」
顔を赤くしたさくらちゃんは、落ち着かない様子。
「そうだ、さっき何話してたんだ?」
「さくらちゃんと登山ガールの動画を見てて、いつかみんなで登山や、キャンプに行けたらなと話してたんだよね……」
真面目な顔で何か考え込む翼。
「夏になったら匠先生も誘ってこの4人で二日間キャンプに行ってみないか?車の免許取ったんだぜ!」
得意げな顔で提案する。
「えっ!匠先生も……」
「先生も一緒の方が何かあったとしても安心だろ?」
「うん、それはそうかもしれないね。看護師さん達には秘密! 後で、匠先生に聞いてみるね」
「おう!まかせた」
「でも、いきなりキャンプと言っても、その身体でテントに泊まらせるのは負担がかかり過ぎるから、今回はコテージに泊まる事にしておこうか」
「それはそれで楽しみかも!」
凄く楽しみになってきて、ニヤニヤしてしまう。
「ツバメちゃん、翼くん、キャンプ楽しみだね」
さくらちゃんも満面の笑みを見せる。
キャンプ場はどこにするか情報誌をチェックしようかな。そういえば看護師さんにキャンプ場の本を貸してあげてたんだった!返してもらいに行こう。キャンプには行けないツバメだったがよく情報誌を読んでは行ったつもりになって楽しんでいた。
「ちょっとナースステーションに行ってくるね」
2人を残して、軽い足取りで歩き出す。
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