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2.出会い
嘉山淳は小太りでいつも何か口にしていた。朗らかで小さい事を気にしないのだ。淳はその容姿から常に笑いの対象だった。血の気の多い僕の方がジリジリする程だ。
初めて連れて行かれた保育園。母親は僕を見知らぬ場所へ置いてきぼりにしたんだ。すぐに理解し先生に可愛がられる子。可愛がられようと先生の顔色を見る子。おませな子。器用な子…。
僕はなかなか馴染めず、教室の隅で泣いてる子だった。
僕は給食にも手をださず、意外に頑固だったのかもしれない。そんな時声をかけてくれたのが淳だった。
「食べないならちょうだい。」
そして先生に叱られた。次の日も、また次の日も淳は叱られた。
それで、僕は給食を食べようと思ったんだ。先生が見てないときは、食べきれないパンを淳の皿に置いたり…淳はニンマリと笑った。それが淳との出会いだった。
僕は自然に保育園に慣れて行った。家族以外の存在を知り、友達という存在の心強さをこの時に悟ったんだと思う。
「宙星、ジュースのむ?オレンジでいい?ってかオレンジしかないけど。ひひ」
「うん。それでいいよ。」
「これ、食品会社に勤めてるおばさんがくれたんだ。飲むんならいくらでもあるからね。あとこれ 」
と言うと紙パック1つと、うまか棒の納豆味5本をテーブルに置いた。
歯が抜けたとこから、いちご大福を半分に割ったような舌がひょろりと顔を出していた。
「賞味期限は…あと1ヶ月だ。ギリ大丈夫だな。」
「大丈夫に決まってるだろ!それで死んだら庭に墓を作ってやるぜ。ひひひ」
朗らかな淳と、変に細かい所がある僕は、実にいいコンビだった。
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