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3.かくれんぼ
淳はお母さんがいない。
小さい頃に、母親が家を出て、その後行方不明になったと噂で聞いたことがあった。
友達でも、僕はその理由を淳に聞くことはしなかった。子供でも踏み込んじゃ行けない壁があるのはわかっていたし、第一、僕はデリカシーのない奴ではない。
でも、白黒ハッキリしないと気が済まない僕の探究心が納得してはいなかった。
おばさんは淳の母親の妹で、掃除や洗濯をしたり買い物をしたりしてお世話をしていた。今思うと、淳は寂しかったのかも知れない。
僕らは、話すことはあまりなく、ただ二人でいるだけで楽しかった。
本当のところ…『勉強しなさい』が聞こえないからだったのかもしれない。
その日、僕はコミック本も読み飽きて、そろそろ『かくれんぼ』をしようと提案した。淳とはいつもこのパターンだった。
そして僕は決まって押し入れに隠れるのだった。僕はすぐ見つかり、そして帰ることにしていた。『かくれんぼ』は帰るための手段だった。
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